昭和医学会雑誌
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健康知識と生活習慣尺度の関連に関する研究
―大学入学直後の学生を対象として―
木村 一彦猫田 泰敏
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1994 年 54 巻 2 号 p. 98-110

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抄録

本研究は, 大学入学時の学生を対象として, 生活習慣と健康知識及び高等学校に於ける保健授業の実態を調査し, 健康知識と生活習慣との関連について検討したものである.岡山県所在の二大学の平成4年度入学生のうち, 4, 月1日現在18歳でかつ性別の判明している629人を対象とした.自己記入方式による質問紙法をもちい, 性別, 年齢, 高等学校における「保健」の授業実態, 「保健」の知識程度及び生活習慣 (運動実施, 睡眠時間, 食事回数) を調査した.1.高校時代の「保健」の履修単位数は1単位以下のものが12.7%であった.「保健」の項目別受講率は心身の機能が88.7%, 健康と環境が61.5%, 職業と健康が55.2%, 集団の健康が52.4%であった.授業形態は教師が独自に作成したプリントを使用した授業が42.3%と最も多く, 最近提案された先生との対話ないし討論を含む授業は5.7%と少なかった.2.「保健」の知識は27問の質問の正答率で表した.平均は55.8%, 心身の機能は47.4%, 健康と環境は66.9%, 集団の健康は51.3%であった.受講率も高く, 生徒の関心もあるといわれる心身の機能の正答率が全般的に低調であったことは基本的知識を習得させる授業の必要性を示唆するものであった.3.知識の程度と教育実態との関連を重回帰分析でみた.性別と項目内容受講数が有意に関連していた.すなわち授業で多くの項目内容に触れることの重要性を示唆するものであった.4.運動睡眠, 食事を総合した生活習慣尺度の作成をPOSAの手法で行い, 健康生活行動パターンに二次元の順序尺度構造を認めた.すなわち最も健康的な生活習慣であると解釈できるものから (17.0%) , 運動ないし睡眠の一方が不健康的となり (42.2%) , 次いで運動と睡眠の両方が不健康的で食事のみが健康的であり (23.2%) , 最後に全てが不健康的となる (5.0%) という順序性のある構造であった.これは食事の習慣が最も重要な要因となり, 次いで運動ないし睡眠の要因となることを示しており, これは個人の健康習慣の変容過程の一定のパターンを示唆するものであった.5.健康習慣尺度と知識の程度の間に有意な関連が認められ, 正答数が多いものほど生活習慣尺度値が高かった.すなわち保健行動の変容のためには保健に関する知識を持たせることの重要性を示唆するものであった.

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