昭和医学会雑誌
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胃癌におけるCEA, CA19-9, AFPの臨床病理学的・免疫組織学的研究
陳 順初河村 正敏草野 満夫高木 康五味 邦英
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キーワード: 胃癌
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1994 年 54 巻 3 号 p. 166-175

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抄録

原発単発胃癌切除91症例を対象として, CEA, AFP, CA19-9の3種腫瘍マーカーの血清濃度を測定するとともに, 外科的手術により得られた組織内およびリンパ節転移巣内での発現について検討を加えた.これらマーカーの血清中の陽性例はCEA23例 (25.3%) , CA19-917例 (18.7%) , AFP4例 (4.4%) であった.早期胃癌でのこれら三種の腫瘍マーカーcombination assayの陽性率は26.3%であるのに対して, 進行癌では47.2%と病期進行とともに陽性率・測定値の上昇が認められた.また, 免疫組織染色による組織内発現の検討では, 組織内の陽性率はCEA83.5%, CA19-946.2%, AFP37.4%であり, また, 血清陽性例での組織内陽性率はCEA100%, CA19-982.4%, AFP75%と血清陰性例の組織内陽性率と比較して有意に高率であった.そして局在様式ではcytoplasmic type, stromal typeが多く, この二型では血清濃度が高値であり, stage分類ではIIIa.bとIVa.bで高率に陽性となった.また, リンパ節転移巣内の陽性率はCEA96.1%, CA19-929.4%, AFP70.6%であり, 局在様式ではcytoplasmic typeとstromal typeが大多数であった.治癒切除症例75例中の再発例は9例 (12%) であり, 再発形式は肝再発4例, 腹膜再発2例, リンパ節再発2例, 肺再発1例であった.これら症例での血清陽性率はCEA77.8%, CA19-944.4%, AFP11.1%であった.再発部位と腫瘍マーカーの関連ではAFPが肝転移と関連が認められ, CEA, CA19-9では再発部位の同定は困難であった.今回の検討で, 術前に血清腫瘍マーカーが陰性の胃癌については, 再発予知のための腫瘍マーカーの組織検索の意義が高く, 組織内局在様式を検索することにより予後を推測できる可能性が極めて高いことが示唆された.

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