昭和医学会雑誌
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長期観察中に肝細胞癌を合併した原発性胆汁性肝硬変の1例
臼井 一郎小貫 誠太田 秀樹西田 均宮本 二一三田村 圭二国村 利明諸星 利男
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1994 年 54 巻 6 号 p. 351-357

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抄録
原発性胆汁性肝硬変 (以下, PBC) に肝細胞癌を合併し, C型肝炎ウイルス (HCV) 抗体, HCV-RNAが陰性であった例を報告する.症例は53歳の男性.1983年, 45歳の時に肝障害を指摘された.血清アルカリフォスファターゼ値の高値, 抗ミトコンドリア抗体 (AMA) 強陽性, 肝生検組織所見からPBC (Scheuer 4期) と診断された.以後, 食道静脈瘤の破裂を繰り返し計3回入院し, 8回の内視鏡的食道静脈瘤硬化療法 (EIS) が施行された.PBCと診断後, 8年目に血清AFP値の上昇を認め, 腹部CTおよび超音波検査にて肝S6に径3cm大の腫瘍性病変を認め, 各種検査から肝細胞癌 (HCC) と診断した.HCCは増大を示し, 肝動脈塞栓術 (TAE) による治療を行った.PBCにHCCの合併は稀であるとされており, 又, その発生に関してさまざまな原因が考えられてきた.HCV感染の同定が可能となって以来, その発生に関して, 従来考えられていた原因の他にHCV感染の関与も推定されている.本症例はHCV抗体さらにHCV-RNAも陰性であり, PBCにおけるHCCの発生につき, HCV感染との関連も含め考察した.
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