昭和医学会雑誌
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外反母趾に対する足底挿板療法
内田 俊彦
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1996 年 56 巻 4 号 p. 363-371

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抄録

足部の障害, 特に外反母趾は近年生活様式の西洋化により, 整形外科領域における治療機会が増加している疾患である.治療手段は保存療法と手術療法の二つに大別されるが, 保存療法においては主に足底挿板療法や足趾の運動療法, 薬物療法が行われており, 変形の矯正に関しては手術療法を行う以外にはないと一般的には考えられている1, 2) .保存療法の中で, 足底挿板療法は古くから行われている治療方法であり, 義肢装具士が作成することが一般的である.しかし義肢装具士が作成している足底挿板は, 履く靴の種類が限られたり, 一旦作成すると修正されることが少なく, そのため足底挿板は効果がない, と判定されてしまうことが多い3) .筆者は昭和62年, 足底挿板を用いることで人の歩行形態が変化することに着目し, 下肢の種々の障害に対して足底挿板を自作し, 従来とは違った観点から外反母趾の治療をおこなってきた.足底挿板療法を施行し, 継時的にレントゲン計測を行い, 経過観察してきた外反母趾, 83趾中26趾に5度以上の矯正角が得られ, 最大矯正角は19度であった.外反母趾角でみると, 35度未満の例において矯正角が得られていた.年齢別には, 40歳以上の例においてのみ5度以上の矯正角が得られていたが, それ未満の年齢群においては得られていなかった.今回の研究から, 外反母趾の治療において, 手術療法を選択しなくても, 足底挿板により痛みのみならず変形の矯正も得られるような例があることを初めて明らかにした.外反母趾の治療方法を選択する上では, 変形角度ばかりでなく年齢も考慮して行う必要のあることが判明した.

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