昭和医学会雑誌
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骨粗鬆症の進行予防に対する運動の有用性に関する研究
杉本 太
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キーワード: 骨粗鬆症, 骨密度, 運動, MD法, DEXA法
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1996 年 56 巻 4 号 p. 372-380

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抄録

人口の高齢化は骨粗鬆症による骨折の増加をきたし, 寝たきり老人の増加を招き社会問題になっている.その一方で高齢者の健康への関心も高まりスポーツ活動も盛んになってきている.Microdensitometry法 (以下MD法) 及びDual Energy X-ray Absorptiometry法 (以下DEXA法) を用いて平成3年から平成7年の4年間にわたりゲートボールを行う高齢者の骨密度を経年的に測定し, 健常者の骨密度, 骨折患者の骨密度等と比較し, 運動の骨密度維持や骨折予防への効果の検討を行った.健常群と年齢層毎に平均値で比較を行ったところ, 男性では、ΣGS/D, L2-4BMD, Neck BMDの全てにおいて運動群が健常群よりも高い骨密度を示す傾向が認められた.女性ではΣGS/D及び70歳代Neck BMDで高い骨密度を示す傾向がみられたが, L2-4BMD及び60歳代Neck BMDでは差は認められなかった.女性骨折群と比較しても女性運動群の骨密度はL2-4 BMDで女性骨折群よりも高い傾向を示し, Neck BMDでは骨折群より有意に高値を示し, 骨折点を下回る症例は認められなかった.このことより骨粗鬆症及び骨折の予防に運動は効果があるとの結論を得た.平成4年時, DEXA法でL2-4 BMD及びNeck BMDで, 多くの症例で骨密度を維持しており, 一年間で骨密度減少は予防されており運動が有用であったと考えた.平成7年時ΣGS/D, L2-4 BMD, Neck BMDの4年間の平均値での変化を運動群と健常群のデータと比較したところΣGS/D, L2-4 BMD, Neck BMDの全てにおいて運動群は健常群に比し骨密度の減少が予防されていたことが示唆された.平成7年時運動群の中に5例のゲートボール中止例が存在し, その骨密度の変化を他の継続群と比較検討を行ったところ中止群の骨密度は, ΣGS/Dにおいて男女ともに平成3年から平成7年にかけて継続群よりも大きく減少していた.L2-4 BMD, Neck BMDにおいても同様に, 中止群の骨密度は継続群と比較して大きく減少する傾向がみられた.うち一例は橈骨遠位端骨折を起こしていた.以上より運動及び運動を継続することは骨粗鬆症及び骨折の予防に有用かつ重要な一要因であるということが確認された.そして骨密度測定は短期間的に考えるのではなく, 長期的に経過観察しその骨密度の推移を観察していく必要があるとの結論を得た.

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