昭和医学会雑誌
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粘膜下層胃癌のアポトーシスと組織多樣性
高村 光一
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1996 年 56 巻 4 号 p. 402-409

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抄録
浸潤, 転移という性格を明らかにし始める時期と考えられる粘膜下層胃癌 (sm胃癌) 41例を対象として, 腫瘍の性格の不均一性について, 組織多様性, ISNEL法によるアポトーシス (A.I.) の検出を行うとともに, アポトーシス関連遺伝子異常としてBcl-2とp53, さらに細胞増殖能としてKi-67 (Ki-67L.I.) について免疫染色を用い検討した.正常粘膜ではA.I., p53はほとんど認めなかった.Bcl-2は深部で全例に発現していたが, 表層では4.9%と低率であった.Ki-67L.I.は中層で21.4±6.9と表層, 深層に対し有意に高値を示していた (p<0.01) .腫瘍部ではA.I.が認められ, 部位別では表面中心部44.4±18.5と, 先進部34.6±13.0と比較して有意に高かった (p<0.05) .Bcl-2は表面中心部7.32%と, 先進部の46.3%と比較して有意に発現が低下していた (p<0.01) .p53蛋白の発現も高率にみられた.Ki-67L.I.は正常粘膜に対して27.5±9.1と有意に高値を示したが, 部位別で差はなかった.組織型に関しては, 分化型でBcl-2は94.7%, p53は68.4%と未分化型の59.1%, 27.3%に対しそれぞれ有意に発現率が高かった (p<0.01) .組織多様性に関しては, 組織型別では分化型腺癌の79.0% (15/19例) , 未分化型腺癌の95.5% (21/22例) に認められた.A.I.について傾向はなかったが, Ki-67L.I.は, 多様性を認める症例で28.5±8.8と, 認めない症例20.6±5.0に対して有意に高値だった (p<0.05) .肉眼型との関係をみると, 多様性を認める症例にてA.I.は陥凹型43.5±8.7, 隆起型33.2±8.1に対して有意に高値を示していた (p<0.05) .A.I.とBcl-2, p53との関係をみてみると, Bcl-2では明らかな傾向はなかったが, p53陰性症例のA.I.は46.7±14.5と, 陽性症例37.7±7.6に対し有意に高値を示していた (p<0.01) .腫瘍粘膜では正常な細胞動態が認められず, アポトーシスの発現も部位において差がみられ, 肉眼型との関係が考えられた.また, 先進部においてアポトーシスの発現が低い傾向にあり, sm胃癌における浸潤との関連が示唆された.組織型においては多様性は未分化型に多く認められ, また多様性を認める未分化型は増殖能, アポトーシスの発現とも高率で細胞回転の高く悪性度が高いことが考えられた.
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