昭和医学会雑誌
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卵管内膜症
九島 巳樹村上 かおり高場 恵美鬼塚 淑子
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1997 年 57 巻 5 号 p. 419-422

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抄録

卵管内膜症は比較的若年の女性にみられ, 後述のように本来は, かなり頻度が高いと思われる病変であるが, 通常は無症状で腹部手術の際に偶然発見されることが多い.また, その診断は病理組織学的になされる.すなわち, 腹膜, 大網, さらにはリンパ節などに一層の円柱状~立方状の上皮細胞からなる腺管構造が認められる.本論文では卵管内膜症について歴史的, 文献的に考察し, 最近, 経験した卵管内膜症の一例について, 病理組織像を示した.卵管内膜症のみでは臨床的に重大な影響を及ぼすことはほとんどないが, 卵巣や腹膜に原発する腫瘍の起源を知ることに役立つ他, 卵巣の境界悪性 (低悪性度) 腫瘍あるいは悪性腫瘍の播種との鑑別, 腹膜原発の中皮腫や漿液性腫瘍などとの鑑別は特に重要で, 不必要な術後の追加治療 (化学療法など) を避けるために, 病理組織診断をする者は必ず知っておかなければならない病変である.

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