昭和医学会雑誌
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不整床面歩行における床反力の分析
池田 誠
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1997 年 57 巻 5 号 p. 440-449

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抄録

高齢者の転倒を防止することは骨折などの外傷予防と関係し, 移動機能の継続, 積極的な生活態度の維持などにつながるため重要である.本研究の目的は歩行面の形状が転倒のしやすさとどのような関係にあるのかを床反力からみた不安定性より明らかにすることにある.対象は日常生活で視聴覚に問題がなく, 片足立ち, 無杖歩行が可能な43名 (20-81歳) である.方法は床反力計を用い, 平面と貼付した凹凸のある不整床面での床反力を比較するため, 自由歩行と1分間に120歩 (以下, cadence 120) で歩行させた.距離・時間的因子は歩幅, 重複歩, 歩行速度, 歩隔, 歩行率を測定した.分析は垂直, 前後, 側方の3成分の制動期と駆動期のピーク値, および距離・時間的因子を年齢階級ごとに検討した.その結果, 自由歩行では平面と比較して足関節が回内位となる凹面の床反力は有意に減少したが, 駆動期垂直成分のみ有意差を認めなかった.cadence 120では凹面の駆動期側方成分のみ有意に減少した.cadence 120の歩行率と歩行速度は自由歩行より有意に増加した.cadence 120の距離的因子は増加したが歩隔のみは平面より有意に減少した.これは凹面では少ない床反力で歩行できたことを示す.歩行面, 歩行様態が異なっても高齢群の垂直成分と前後成分は若年群より有意に減少したが, 側方成分は有意差が見られなかった.これは高齢者の床反力は床面の形状とは無関係に垂直・前後成分が減少する加齢変化を示すが, 側方成分は加齢変化より床の形状, とくに凹面で影響を受けたことを示す.結論として床面に対して足関節を回内位で着地させて側方の安定性を高めることが高齢者の歩行中の転倒を防止するために重要であることが示唆された.

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