昭和医学会雑誌
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片手操作用車いすの操作特性
植松 光俊
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2000 年 60 巻 5 号 p. 618-631

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抄録

各種片手操作用の車いすの操作特性を明確にするため, スタンダード型車いす (S型) と4種類の片手操作用車いす, ダブルハンドリム型1種 (W型) および操作機構の異なるレバー型3種 (L1, 2, 3型) を用いて, 実験1: 100m快適および最大速度駆動における速度・駆動ピッチ数・脱輪回数・エネルギー代謝率 (RMR) および心拍数比較 (健常者6名対象) , 実験2: (1) 7種の駆動操作性課題遂行における所要時間, 駆動ピッチ数, 直進性評価と主観的運動強度や疲労部位, 操作難易性についてのアンケート調査比較 (健常者10名対象) , (2) レバー型車いす間の介助操作性比較 (健常者12名対象) , 実験3: 1週間の駆動操作習熟効果のスラローム走行所要時間および院内移動自立度における比較 (高齢障害者19名対象) を行った.その結果, 1) 快適速度での走行速度ではほぼ全車とも片麻痺患者の歩行速度と同等程度であり, RMRは「弱い運動」以下であったが, 快適速度走行直後心拍数はWおよびL1型が他車に比較し有意に高かった.2) 駆動課題における操作性はS型, L2, L3, L1, W型の順に良かった.L1型は力の伝達効率が不良で速度は遅く駆動ピッチは多く, L3型は移乗動作課題での難度が高いが, 力の伝達が良くスロープでは他の車いすより速かった.介助操作性はL1型が比較的良かったが, L型全体に改良すべき点が多かった.3) 院内車いす自立移動の目安は5mスラローム1往復で1分前後であった.S型においてW型と同じ程度に駆動速度が遅い患者は, L型が他車より早く自立する場合が多かった.また, L型では心悸亢進, 上肢の痛みを訴えるものが多かった.以上の結果から, S型の適応は残存能力の高いものに, L型は残存能力の低いもの, なかでもL1型は上肢筋力や協調性が低下したもの, L3型は上肢筋力が強く, 屋外駆動の必要性があるものに, L2型はその中間的適応と考えた.W型の適応は非常に低く, L1型とともに心疾患患者への処方には慎重を期する必要性があることが分かった.片手操作用車いすではこれらの適応を把握した処方をすべきである.

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