昭和医学会雑誌
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成熟家兎を用いたハイドロキシアパタイトonlay graftにおけるsinkingの実験的研究
斉藤 康太郎土佐 泰祥佐藤 兼重Mehmet Oguz YENIDUNYA保阪 善昭
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2001 年 61 巻 3 号 p. 333-339

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抄録

近年, 自家骨移植にかわる種々な体内埋入材料が開発されている.その中でもハイドロキシアパタイト (HAP) は, 臨床上広く使用されてきている.中でも頭蓋顎顔面骨の変形や欠損に対し, HAPは自家骨移植に代わるbone substituteとして利用されている.HAPは, 骨の無機成分であるリンとカルシウムのみから合成されているため骨親和性が強く, onlay graftした場合に骨と接合し, 臨床的にドナーの犠牲がないという利点がある反面, 程度の差はあるがsinking現象が起こることが知られている.山田らはsinking現象がonlay graftの部位, 気孔率の差におよぼす影響について幼若家兎を用いて報告した.今回われわれは, 成熟家兎を用いて実験を行い, onlay graftの部位, 気孔率の差によりsinkingにどのような違いが生じるかについて実験の結果から比較検討した.実験動物としては, 約3kgの雄のNew Zeal and White (NZW) 成熟rabbitを用いて, 焼成温度約1200℃で生成された30, 50%の気孔率を有する大きさ12x6x3mmのHAPブロックをインプラントとして使用した.手術は塩酸ケタミンI.V.の後, 左右の前頭骨, 頬骨, 下顎骨の6カ所で骨膜下に挿入した.同様の条件で同部位の骨膜を切開し, そのまま縫合した3羽のNZW rabbitをsham群とした.これら3羽を含めた19羽を移植後8週目に屠殺した.HAPと母床骨とを一塊に標本として採取し, Villanueva bone染色の後観察を行った.sinking現象の度合いに関して部位別では下顎骨〉頬骨で強く, 前頭骨では軽度であった.また気孔率別では50%>30%で強く認められたが, 山田らの幼若家兎 (400-6009) 群に比べては軽度であった.また, 組織学的検索ではHAPと母床骨との接触面およびマクロボア内に骨芽細胞と破骨細胞が混在している所見が認められ, sham群とは異なった経過を示した.以上より, HAPの臨床応用に際し, インプラントの強度およびgraftする部位を考慮した上での気孔率の選択と利用時の年齢は重要な要因の一つであると推察された.

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