昭和医学会雑誌
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Acute mountain sicknessにおける血清reactive oxygen metabolites値を用いた酸化ストレス度の評価
鈴木 慎太郎太田 秀一木内 祐二根本 哲也小林 健太松倉 聡土肥 謙二有賀 徹
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2006 年 66 巻 4 号 p. 291-297

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抄録
登山者の酸化ストレス度の評価を行うために活性酸素代謝産物である血清中のDiacronreactive oxygen metabolites (D-ROM) 値を測定した.全く独立した (A) , (B) 2つの検討を行った. (A) 健常成人14名に対し北岳登山前後に採血を行い, 血清中のD-ROM値を測定した.その結果, 登山前に比べて登山後に有意に血清D-ROM値が増加していた. (B) つぎに急性高山病Acute Mountain Sickness (AMS) 患者における酸化ストレスを評価するため, 昭和大学医学部北岳診療所を受診した北岳登山者のうち患者21名について血清D-ROM値を測定したところ, 年齢をマッチさせた健常対照者と比較して有意に高いD-ROM値を示した.また自覚症状による重症度スコアであるAMSスコアが大きいほど, D-ROM値が高くなる傾向を示した.高地環境では低酸素や低圧などにより, 登山者の体内, とくに血管内皮が障害を受け, 様々なフリーラジカルや炎症物質が産生され, AMSの発症に関与していることが知られている.血清D-ROM値のように微量のサンプルで, 簡易に登山者の酸化ストレスがモニターできれば, AMS重症度の評価や, AMSの発症予測に有用であろう.
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