昭和医学会雑誌
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腹部の手術を受ける患者の手術前後の不安と具体的な心配の構造
城丸 瑞恵下田 美保子久保田 まり山口 知子宮坂 真紗規堤 千鶴子伊藤 武彦
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キーワード: 腹部, 手術, 不安, 心配, 患者
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2007 年 67 巻 5 号 p. 435-443

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抄録

本研究は, 消化器疾患を中心とした腹部の手術を受ける患者の不安状態をもたらす「心配」に焦点をあてて, 手術前後の具体的な心配の内容や相互の関係を明らかにすることで, より抽象的な不安の構造を探索的に実証することを目的とした.研究対象者は, 研究の同意が得られたA大学病院B病棟で手術を行った患者113人中, 回収ができた103人であり, 平均年齢59.6 (±12.7) 歳, 男性66人, 女性37人であった.調査内容は, 手術前後の各時期に予測される心配の原因・内容・状況について先行研究を基にして研究者間で検討したのちに, 手術前後各15項目を設定した.分析の結果, 手術後は「心配の尺度得点」が「退院後の社会生活 (r=.59, p<.001) 」「退院後の日常生活 (r=.57, p<.001) 」に対する心配と相関がみられ, 退院後の生活の再構築に視野をひろげた支援の必要性が伺われた.手術前後の心配各項目の類似性と構造を把握するために, クラスター分析 (ウォード法) を参考にしてMDS (多次元尺度法) を解釈した結果, 「対応満足」「現在の不安」「心の準備」「結果不安」「手術後関係不安」の5つに分類ができた.悪性腫瘍の有無や術式, 性別, 年齢と心配の関係をみると, 特に年齢の影響が大きいことが見出され, 65歳未満の対象は65歳以上の対象より, 手術前は「仕事に対する心配」や「医療従事者の対応不安」, 「手術後の処置に対する心配」が強く, また手術後も「医療従事者の対応不安」が5%水準で有意に強くなることが示唆された.

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