昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
接触式血管形状センサを用いた血管粘弾性の測定
福隅 正臣手取屋 岳夫大野 正裕大井 正也岡山 尚久尾本 正毛利 亮石川 昇土屋 健介荒岡 晋輔竹内 孝次畑村 洋太郎近石 康司
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 68 巻 3 号 p. 192-198

詳細
抄録

血管外科領域での手術数の増加に伴い, 人工血管の使用頻度が高くなっているが, 小口径人工血管の開存性は生体血管グラフトに比して劣っている.開存性に関わる因子として, 血管の力学的特性が指摘されており, 様々な方法で血管動態が観察されているが, 精度, 分解能が不充分であった.そこでわれわれは生体および人工血管の挙動をより精密に観察するために, 接触式血管形状センサを開発した.本装置は先細の先端で感知した血管の変位を, 体外で渦電流センサにより測定し, 時間・空間分解能に優れている.また血管の断面積を縦横の2次元で求めることで精度を高めている.この装置を用いin vivoにおけるブタの頚動脈の断面積変化を測定した.同時に先端トランスデューサー圧センサにて同部の血圧変化を測定した.グラフトとしてブタから採取した大腿静脈と, 小口径人工血管として使用頻度の高い直径6mmのexpanded polytetrafuluoroethylene (ePTFE) を用い, それぞれ頚動脈を置換し同様に測定した.血圧と断面積変化率から, hysteresis loopを描出し, 各血管の粘弾性を定量的に評価した.弾性は血管のコンプライアンスを求めることで評価し, その指標として血管伸展性Distensibility (D) を次のように計算した.D= (△A/A) /△Pここで, Aは拡張末期断面積△Aは断面積変化, △Pは血圧変化を示している.Distensibilityは動脈19.6×10-4mmHg-1, 静脈8.9×10-4mmHg-1, ePTFE2.2×10-4mmHg-1であり, 動脈は他のグラフトより伸展性に富んでいた.一方粘性はhysteresis loop内の面積の大きさから, 定量的に評価した.その結果は動脈0.114mmHg, 静脈0.037mmHg, ePTFE0.062mmHgであった.動脈は静脈, 人工血管に比して高コンプライアンス, 高粘性という性質を有していた.本装置により従来困難であった血管の粘弾性を定量的に評価でき, 今後血管の力学的特性の開存性への影響の解明に寄与すると思われた.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top