生体医工学
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抄録
脳科学を応用したうつ病の革新的診断法・治療法開発に向けて
山脇 成人
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2016 年 54Annual 巻 27AM-Abstract 号 p. S137

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抄録

急増するうつ病は休職や自殺の要因ともなっており、その対策は国家的課題となっている。日本医療研究開発機構(AMED)の脳科学研究戦略推進プログラム(脳プロ)において、うつ病の病態に基づいた客観的診断法と革新的治療法の開発が重要なテーマとなっている。うつ病の病態は多様であるが、現在のうつ病診断は、抑うつ気分などの症候に基づいており病態に基づいていない。治療も試行錯誤で行われているのが実情で、適切な診断・治療のためには、うつ病の神経回路・分子病態に基づく診断と治療法開発が必要不可欠である。

 うつ病発症には、遺伝的要因と養育環境など相互作用による神経回路形成不全とモノアミン、グルタミン酸異常などの分子病態が関与するが、その神経回路異常と分子病態の関連はまだ不明な点が多い。本講演では、うつ病診療の現状と課題に加えて、演者らが脳プロで行ってきた脳由来神経栄養因子(BDNF)に関する分子病態研究、機能的MRIを用いた脳機能画像解析によるうつ病症候に関連する神経回路異常、これらの多次元データを機械学習を用いたうつ病の客観的診断法、治療反応性予測法の開発などの研究成果を中心に、最新のうつ病の脳科学研究を紹介する。最後にうつ病のニューロフィードバック治療法開発を含めうつ病の革新的治療法の今後の展望についてものべる。

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© 2016 社団法人日本生体医工学会
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