2016 年 54Annual 巻 28PM-Abstract 号 p. S362
補助人工心臓において、脱血カニューレの心筋挿入部位周囲に血栓が形成されることが問題となっている。血栓形成の主因はカニューレの生体適合性であると考えられており、材料表面に形成される血栓と、心筋とカニューレの間隙に生じる凝血塊がクリアすべき課題である。この問題を解決すべく、新たに開発したハイブリッド材料を用いて脱血カニューレの作製を試みた。ハイブリッド材料は、人工材料と生体由来材料とを組み合わせた材料のことで、組織新生の足場となる人工材料を生体の皮下に埋め込み、生体組織と人工材料とを一体化させることにより得る。作製した材料に脱細胞化処理を行うことで細胞外マトリックスのみを残し、細胞成分を除去することで同種移植が可能な材料となる。このように作製した材料は、人工材料の強度と、細胞外マトリックスによる高い生体適合性を持つ材料となると考えた。開発した材料を用いて補助人工心臓用脱血カニューレを作製し, VADと共にヤギに埋め込み、慢性実験を行った。実験期間中は、抗凝固療法、免疫抑制療法を行わなかった。実験終了後、カニューレと心筋はきれいに癒合しており、カニューレ内腔および外側に、問題とされている血栓は認められず、良好な結果を得た。