2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 138
ミューオピオイド受容体欠損(MOP-KO)マウスについて、MRIを用いた脳部位体積評価を用いることで、中脳中心灰白質(PAG)の体積が野生型マウスに比べて増加していることが示されている。PAGは、自律神経や感覚性の入力を受け、痛覚抑制作用など自律神経系活動の発現に関与するとされている部位であり、こうした変化が、MOP-KOマウスの運動行動にどういった影響があるかについて、オープンフィールドテストで測定することにした。実験には野生型マウス12匹、MOP-KOマウス12匹を用いた。それぞれのマウスについて自家製のビデオ測定・解析装置を用いて、10分間の行動を記録し、その運動量を解析した。その結果、移動速度は野生型マウスが145.1±26.7 mm/secに対し、MOP-KOマウスは107.0±27.5 mm/secであり、有意に移動速度が低下していた。また、移動速度の変動係数を求めたところ、野生型マウスの0.39±0.06に対し、MOP-KOマウスは0.40±0.04であり、野生型マウスと、MOP-KOマウスの間で、移動速度のばらつきに違いがあるとはいえなかった。これらの結果から、MOP-KOマウスでは、PAG体積増加などを反映した痛覚過敏反応に伴い、移動速度が低下しているものと推察される。