生体医工学
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抄録
4D肺モデルにもとづいた埋め込み型人工肺の設計
北岡 裕子
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2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 163

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抄録

現在臨床使用されている人工肺には、心臓手術の際に使用される人工心肺と重症呼吸不全の際に用いられる膜型人工肺があるが、どちらも体外型で、移植肺と同じように胸郭内に埋め込む人工肺は全く開発されていない。その理由は、肺胞の構造が微細かつ複雑に過ぎるためと考えられる。演者は第55回本総会で肺胞系における気流血流ガス拡散シミュレーションを発表し、ヒトの酸素需要を賄うのに「テニスコート1面分」の表面積は不要であること、肺胞系の微細構造は弾性復元力を獲得するために必要であることを明らかにした。生体の弾力線維よりも強力な弾性をもつ人工材料を用いれば、実際の肺胞のサイズの20倍程度であっても、安静時の酸素需要を賄うガス交換を達成できる。また、20倍大の人工肺胞であれば、現在体外型人工肺で用いられている中空糸のサイズで肺胞壁内の血流が維持できる。3Dプリンターを用いて作成した人工肺を患者の胸郭に埋め込む方法として、患者の気管支、肺動静脈と人工肺の気管支、肺動静脈を接合させる。そうすると、患者の心拍動により肺循環が成立する。また、人工肺の表面を、患者の胸壁胸膜と密着させると、患者の呼吸運動に追随して人工肺が膨張収縮し、接合した気管支を通して空気が出入りする。つまり、外部からの動力なしで、換気と肺循環が成立する。永続的な埋め込み型人工肺の開発は、医工学研究者が挑戦すべき重要課題と考えられる。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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