2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 232
生体組織環境を再現するための三次元培養法である細胞のカプセル化培養技術はオイルによって界面を作製する手法やアルギン酸とCa2+の反応を使用した手法がほとんどである。これらの手法では、オイルが細胞にダメージを与えてしまうことやアルギン酸内で長期培養できる細胞種が限られていることが課題であった。本研究では、オイルフリーでコラーゲン内に細胞を内包するCell ball技術を開発した。コラーゲンカプセル内にラットおよびヒトiPS細胞由来ニューロンを内包し、神経ネットワークを構築したNeuron ballの作製に成功し、シナプス機能および電気生理学的な機能を確認した。次に、脳腫瘍モデルに着目し、ヒトグリオーマ細胞を内包したところ、2次元培養では見られない腫瘍形成がカプセル内で観察された。更に、アストロサイトを共培養したところ、グリオーマ細胞単独の場合に比べて、有意にがん増殖能が高まることがわかった。これらの結果は、がん微小環境モデルをゲルボール内に構成的に構築できる可能性を示唆している。フローサイトメトリー解析法と組み合わせることで、ハイスループット薬効試験法などへの応用が期待できる。