生体医工学
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抄録
敗血症性ショックにおける循環管理を支援する、コンピュータ制御自動循環蘇生システムの開発
上村 和紀川田 徹鄭 燦李 梅花杉町 勝
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 268

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目的:敗血症性ショック状態からの循環蘇生には、大量の輸液療法と、適切な昇圧剤投与が必須である。しかし患者により薬剤応答が異なり、また患者個人でも時間経過で応答は異なるため厳重な循環のモニターと頻回の薬液投与量調節が必要であった。この問題を克服するため我々は、この薬剤投与をコンピュータ制御し、循環蘇生を完全自動化する治療システムを開発し、犬(8頭)の敗血症性ショックモデルにおいてその制御性能を確認した。方法:我々のシステムは血圧(AP)・心拍出量(CO)・中心静脈圧をモニターし、血管抵抗(R)・有効循環血液量(V)・心機能を指標化する。ノルアドレナリン(NA)によりRを、リンゲル生理食塩水(RiA)によりVを制御し、APとCOを制御する。8頭中4頭の犬では臨床応用を見据えAPとCOは非侵襲的に計測した。全ての犬において大腸菌内毒素を投与しショック状態(AP=42±5mmHg, CO=60±17 ml/min/kg)を作り、我々のシステムを適用した。結果:我々のシステムは起動後速やかにNAとRiAを投与開始、約40分以内にRiAによりVを、NAによりRを目標値まで改善した。これによりAPは70±2 mmHg、CO は 130±10 ml/min/kgまで改善し、4時間維持した。目標値からの誤差はAP (-1±4 mmHg) とCO (-3±10 ml/min/kg)でわずかであった。APとCOを非侵襲的に計測しても制御は良好であった。結論:我々の制御システムは敗血症性ショックの患者を救命する上で有用であると期待される。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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