2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 299
呼吸性不整脈(RSA)と呼吸リズム間の位相コヒーレンス(&lambda)は心理ストレスで低下し,心拍変動の副交感神経活動指標と正の相関を,交感神経活動指標とは負の相関を示すことが明らかにされ,&lambdaは自律神経活動の指標となり得ることが示唆されている。心拍変動から推定される自律神経活動と睡眠時の脳波&delta波活動には強い相関が見られることが報告されており,&lambdaはノンレム睡眠時に高くなると予想される。これを検証するため,&lambdaが睡眠時の脳波活動に依存してどのような変化を示すか調査し,&lambdaが睡眠状態の指標になり得るか検討した。被験者17名で睡眠時の心電図(ECG)と脳波(EEG)の同時計測を行った。EEGは周波数帯ごとに分類し瞬時振幅を算出した。ECGの振幅変調から呼吸リズムを推定し,心拍間隔変動を呼吸周波数帯域のバンドパスフィルタにかけRSAを抽出した。RSAと呼吸のヒルベルト変換から瞬時位相差を求め&lambdaを算出した。&lambdaは深睡眠時に現れる&delta波と最も高い正の相関が見られ(0.51±0.03),&lambdaの変化が&delta波の変化に平均で7.1±1.7分先行した。また,&lambdaの周期は平均89.8±3.5分であり,&delta波の平均周期85.5±3.5分と酷似していた。&lambdaと&delta波にそれぞれ閾値を設定し、2ステージの睡眠段階を推定したところ,一致率は64.5%であり,&lambdaは睡眠段階の指標になり得ることが示唆された。