2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 316
ワーキングメモリとは,認知心理学において,短時間の情報を保持し,同時に処理する能力を持つ構造や過程を指す構造概念である.これまでの研究において音楽家は非音楽家に比べてより速いワーキングメモリの更新を示し,より多くの神経リソースを音響刺激に割り当てていることを示したと報告されており,楽器の演奏経験期間がワーキングメモリの改善と関連があることが示された.しかしながら,どのような音楽的スキルがワーキングメモリに影響するか明らかではなかった.そこで音楽的スキルとワーキングメモリとの関連性について検証を行った.音楽的スキルとして視唱,絶対音感,相対音感を用い,被験者のワーキングメモリの能力を脳波のP300の振幅と潜時により計測し,関連性について検証した.その結果,音呈示のP300の振幅と絶対音感和音の間で有意な正の相関がみられた.また,画像呈示のP300の潜時と視唱の間において有意な負の相関がみられた.一方,画像呈示のP300の潜時と相対音感和音の間で有意な正の相関がみられた.この結果は,音楽的スキルとワーキングメモリ能力の負の相関を示しており他の結果と矛盾している.この理由として,被験者が6名と少なかったためであることが考えられる.今後は,被験者を増やし統計的な問題を解決したい.