2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 330
心室頻拍・細動は心臓突然死に繋がる重篤な不整脈である.一旦発生した不整脈を停止させるには通電刺激を用いた除細動治療が最も効果的かつ唯一の手段であるが,体外式除細動装置や埋込み型除細動器はいずれも高い通電エネルギーを用いるため患者への負担が大きい.また除細動刺激が却って複雑な不整脈を誘発してしまう催細動の可能性がある.以上より,より低エネルギーで確実な除細動を実現する新たな治療手法の確立が急務である.そのためには不整脈の成因である旋回性の異常興奮Spiral Reentryの機序の解明と,確実な制御手法の確立が必要である.我々は摘出心臓標本と膜電位感受性色素di-4-ANEPPSを用いた心臓興奮伝播光学計測システムを開発し,心臓標本上に誘発したSpiral Reentryに対して微小電極アレイより点通電刺激を印加することで生じる興奮波への影響について計測と解析を行った.本研究により,心筋組織へ通電刺激を印加する事で生じる仮想電極分極現象によって新たに生成される旋回興奮と,不整脈興奮波であるSpiral Reentryの旋回興奮が相互作用することで旋回中心が移動するSpiral Shift現象の発生条件が,Spiral Reentryの旋回中心位置と微小電極位置,そしてこれら2つの位置関係と電極直下の心筋線維走向とが成す角度によって規定される事が示唆されたので報告する.