生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
抄録
幹細胞の品質保持のための培養力学場設計
木戸秋 悟
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 338

詳細
抄録

再生医療のために幹細胞を利用するにあたっては、必要な細胞に分化誘導を行うのと同等もしくはそれ以上に、その細胞試料の規格化・標準化が重要な課題である。例えば、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell; MSC)は再生医療等の臨床応用に最も近い細胞医薬品資源として注目される幹細胞の一つであるが、採取方法や個体差の影響、および培養中の状態変化等に起因した細胞ロット間のばらつきが大きく、その品質を保証する評価基準と培養技術の確立が強く求められている。培養中のMSCの品質変化の一因として、培養環境の力学的環境の経験履歴の記憶の関与が近年報告され、MSCの品質保持培養における培養力学場の定義が課題となっている。この課題に対し我々は、細胞培養ゲルに対して微視的に弾性率の分布を刻みこみ、MSCがその上を自発的に遊走する過程で力学場のパターンから受けるメカノシグナルの入力を振動させるアプローチにより、MSCに未分化状態を保持させる培養力学場の設計を行っている。すなわち、硬・軟領域の周期的弾性場で間葉系幹細胞を培養すると、各領域間の非定住運動の過程で硬・軟領域それぞれにおいて対応する系統へと分化誘導される効果が抑制され未分化性が維持され得る(分化フラストレーション現象)。本講演では幹細胞の品質保持に関与する培養力学場の設計指針についてMSCとともにiPS細胞の系についても述べる。

著者関連情報
© 2017 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top