生体医工学
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抄録
腱特異的転写因子Mkxを介した腱の発生と再生
Hiroshi AsaharaKensuke KataokaYoshiaki Ito
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2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 342

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腱・靭帯は身体の各組織を繋ぐロープのようなもので、この組織が全身の動きを支え、力を伝えることで、“動く”ことが可能になる。その発生・再生のメカニズムはまだ不明の点が多く、腱・靱帯の損傷や疾病の完全かつ早期の治癒は未だ困難である。私たちは腱・靭帯の再生の要となる遺伝子Mohawk (Mkx)を同定し(1)、腱におけるマスター転写因子としての重要な機能を明らかにしてきた(2,3)。さらに詳細な生理学的、分子生物学的および医学的な研究のため遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9システムによるMkxラットノックアウトラットを作製したところ、全身の腱が脆弱になっていることがわかった。さらに、ノックアウトラットをさらに詳細に解析すると、出生後まもなくアキレス腱が骨化することが明らかになった(4)。このメカニズムとして、腱細胞に対する機械的な伸展刺激(メカノ刺激)が、Mkxという遺伝子スイッチを押すことで、腱・靭帯を守り、骨化を妨げることが示唆された(4)。さらに、このノックアウトラットから得られた十分量の腱細胞を用い、クロマチン免疫沈降と次世代シークエンサーを組み合わせた研究手法によって、腱を再生し維持する遺伝子のプログラムを詳細に明らかにした(4)。さらにこれらのツール、情報をもとに、力学的刺激(メカノ刺激)の分子メカニズムや腱の再生医療における新しい知見を得ることができた。1. Ito Y, et al. (2010) Proc Natl Acad Sci USA. 2. Koda N, et al. (2016) Development. 3. Nakakichi R, et al. (2016) Nat Commun. 4. Suzuki H, et al. (2016) Proc Natl Acad Sci USA.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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