生体医工学
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抄録
脳機能賦活に連動する脳血流代謝
菅野 巖
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2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 356

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抄録

Roy & Sherringtonにより1890年に示された脳活動に伴う脳血流の増加が、脳賦活時に局所レベルで起こることを1970年代になってLassenらが133Xeクリアランス法で初めて示した。Phelpsらはほぼ同時代に知覚刺激により糖代謝が増加することを18F-FDGのPET測定で示した。ところが、1980年代になりRaichleやFoxが15OガスのPETで脳血流と酸素代謝の同時測定で脳血流の増加に比べ酸素代謝の増加が低いことを示した。これはそれまでの脳血流と脳代謝は連動するという脳の生理学の常識を覆し、この脳血流と脳酸素消費の不一致こそが脳賦活時に血液中の酸化ヘモグロビン(OHb)と還元ヘモグロビン(DHb)の濃度比の変化を誘引しそれがfNIRSやfMRIの信号源として最近の脳科学の新しい潮流をもたらした。OHbとDHbの吸光特性や磁気特性の物理特性が異なるため、この変化が頭蓋外から非侵襲的に検出でき、その結果、脳機能活動の非侵襲イメージングが可能になってきた。ただ、fNIRSやfMRIの信号の物理学的なメカニズムは約10年の歳月を経て解明されてきたが、酸素代謝に比べ脳血流の過剰な増加の生理学的なメカニズムは、まだ未解明である。本演題では、脳賦活に伴う脳血流と脳酸素消費の測定の歴史的経緯、脳神経活動に伴う脳血流と酸素消費の変化に関する核医学を中心に得てきたこれまでの知見、さらに、二光子顕微鏡などによる最新の知見について報告する。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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