生体医工学
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抄録
機能的磁気共鳴画像(BOLD fMRI)の原理
河内山 隆紀
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2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 357

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抄録

過去20年にわたり、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)は脳活動計測実験に広く利用されてきた。その主な原理であるblood oxygenation level dependent(BOLD)効果は、血液内の赤血球に含まれる色素である還元ヘモグロビンを内因性の造影剤として用いている。還元ヘモグロビンは常磁性体であり、その周辺に磁場の乱れを生み、局所的なMR信号強度の減少をまねく。つまりMRI画像で「見える」のである。一方、脳の神経活動の増加は、脳酸素代謝量の増加に比べて大きな脳血流量の増加を引き起こす。その結果、単位体積あたりの還元ヘモグロビン量は減少し、MR信号強度はかえって上昇する。fMRI実験では、このような信号変化を画像化することで脳活動を評価している。BOLD信号は、原理上、脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、脳酸素代謝量(CMRO2)などの複数の生理学的パラメータに依存する。また撮像シーケンスやMRI装置の磁場強度によって信号の起源となる毛細血管床や細静脈の関与の様式が異なるなど、信号の生成メカニズムは複雑である。fMRIを実験に有効に活用し、その結果を正しく解釈するためには、fMRI原理についての理解が不可欠である。本講演では、BOLD fMRIの生理学的・物理学的メカニズムについてできるだけ分かりやすく解説したい。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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