生体医工学
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抄録
マイクロサッカードの動的特性を再現する固視微動の数理モデル
奧 慎介大谷 尚平小濱 剛吉田 久
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2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 360

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抄録

特定の視対象を注視する際に生じる微小な眼球運動を固視微動と呼ぶ.固視微動と視知覚との関係を明らかにするために,網膜数理モデルを用いたシミュレーション研究もなされているが,固視微動の数学的なモデルが確立されていないため,シミュレーション結果に対する妥当性に関する評価が困難となっている.従来の固視微動のモデルには,固視微動の揺らぎが持つ平均2乗変位量特性を再現するものが提案されているが(徳留ら,2015),固視微動に含まれる微小なジャンプ運動であるマイクロサッカード(MS)が誤差関数を用いて記述されており,その特性が十分に再現されていない.そこで本研究では,よりリアリスティックな固視微動モデルの構築を目的として,MSの動的特性を再現する数理モデルを構築した.実際の固視微動データから,MSを含む一定時間の時系列データを抽出して加算平均を算出し,その動的特性の定式化を行った.MSの平均振幅は0.5deg程度であるが,振幅にはバラつきが大きく,注視視標の形状によっても平均振幅が変化するために,0.3deg刻みに振幅のカテゴリを設け,各カテゴリ間で加算平均を算出した.その結果,MSの動的特性は,振幅,オーバーシュート,視線の変位量をパラメータに持つ非線形関数の組み合わせにより記述することが示され,従来の固視微動モデルに組み合わせることで,より実測データに近い固視微動モデルが生成された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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