生体医工学
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抄録
神経に対する光増感反応:ex vivoでの検討
高橋 晴香浜田 梨沙小川 恵美悠荒井 恒憲
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2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 386

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抄録

発表者は光増感反応による神経障害をex vivoで調査することを目的とし、神経のタラポルフィンナトリウム取込と光増感反応による神経障害を電気伝導計測で調査した。ザリガニ腹側神経とブタ横隔神経を20 μg/mlタラポルフィンナトリウム溶液に0-240 min接触後、薄切し、蛍光顕微鏡で観察した。断面方向の蛍光輝度を算出したところ薬剤接触時間に依存して蛍光輝度は増加し、接触時間120 minで飽和した。またブタ横隔神経において神経周膜内部では周膜外部1/3程度の蛍光輝度となった。この結果より有髄神経において神経線維を含む周膜内部では光増感反応が起きにくい可能性が示唆された。またザリガニ腹側神経をタラポルフィンナトリウム 20 μg/ml に接触後、波長663 nmのレーザ光を放射照度120 mW/cm2で照射し、光増感反応を起こした。電圧1-5 V, パルス幅0.1-0.5 msで神経を刺激し活動電位を測定した。照射時間の増加に伴い活動電位の伝播速度は遅くなり、照射時間25-65 sで活動電位は消失した。この結果より無髄神経において大気分圧下では光増感反応に対する耐性はないと考えられる。光増感反応を用いた上大静脈の電気伝導遮断をin vivo実験で実施したところ横隔神経が保存されたという報告がある。本研究の結果からタラポルフィンナトリウムの周膜内部への低取込と神経の低酸素分圧が光増感反応を用いた電気伝導遮断における横隔神経保存の原因である可能性が示唆された。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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