2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 387
発表者は、光増感反応を用いたin vitro実験において、溶液内の溶存酸素量を増やし更に酸素環境および反応進行を把握することを目的に、赤血球を培養溶液に加え溶液の透過吸収分光測定を行うことを提案した。光増感反応を用いたin vitro実験において、光照射に伴いの酸素分圧が低下し、酸素枯渇が生じていることが報告されている。酸素枯渇は反応効率の低下につながるため、酸素環境に関して十分に考慮する必要がある。酸素予備能のあるヘモグロビン(以下、Hb)を溶液に加えることで酸素の化学的溶解量を増やすことが可能である。さらに、主なHbとして知られる酸素化Hb、脱酸素化Hb及びメトHbはそれぞれ特有の吸収スペクトルを持つため、吸収分光測定により酸素化Hb及び脱酸素化Hb量を解析でき酸素環境を把握可能である。加えて、分光測定からは光感受性薬剤の退色も分かるため光増感反応の進行を把握することもできる。光感受性薬剤talaporfin sodiumを含む赤血球混濁液試料に対し、波長663 nmの励起光を当て、反応後の試料の透過吸収分光測定をした。得られたスペクトルに対し、重回帰分析を行い、各Hb濃度を算出した。放射照射量増加に伴う酸素化Hbの増加、脱酸素化Hbの減少及び薬剤退色が確認できた。これは本法により反応による酸素消費と反応進行を捉えられていることを示していると考えられる。