生体医工学
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抄録
表面弾性波により誘導される微小液滴内流動を用いた細胞撹拌および分離に関する数値シミュレーション
矢野 哲也渡邊 翔
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2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 396

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抄録

【目的】表面弾性波(SAW)を用いた流体駆動技術の開発が進められている.極微量の試料細胞を非接触で迅速に薬液と反応させられることから,医療検査分野への応用が期待される.ここでは,SAW基板上に配置した微小液滴に比較的小パワーのSAWを照射した際の液滴内流動および液滴内の粒子挙動を計算し,粒子分離の可能性について検討することとした.【方法】基板上に滴下した体積30 μLの液滴を直径4.86 mmの半球形状で近似し,計算機上にモデリングし,SAW照射による流体駆動力を考慮して内部の流れを計算した.ただし,SAW照射領域の幅を2 mmとし,液滴中央から水平方向に1.2 mmだけ平行移動させた位置を伝播することとした.【結果】SAW照射開始から0.06 s経過時点で鉛直上向きの流動が見られるようになり,0.2 s経過時までにSAW作用位置近傍に形成された渦状の流れは,その後,徐々に液滴の中心に向かって移動するとともに,その大きさを増し,定常状態に達することが確認された.流動による粒子挙動の計算結果から,密度の大きい粒子は液滴底面に沿って液滴中央方向に移動し,その位置に堆積すること,血球を想定した粒子は分散媒と同程度の密度であるため,液滴内の流動に追随し,液滴中央付近で上昇し,SAW照射停止後,液滴底面上の辺縁部に集積することが確認された.このことから粒子分離の可能性が示された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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