2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 431
創薬研究を効率化する方法として,培養細胞によるアッセイが広く研究されている.動物実験と比較して低コストかつ迅速に評価を行うことが出来る一方で,外挿性の確保に向けて生物種差およびin vivoとの環境の差が課題となっている.近年,薬剤の副作用評価の効率化に向けて,ヒトiPS細胞由来心筋細胞(human iPS cell derived cardiomyocyte; hiPSCM)を微小電極アレイ(Microelectrode array; MEA)上に培養した実験系が開発され,広く用いられている.しかし,検出可能な副作用は心筋細胞のみを対象としているため,心筋組織の活動を調節する神経組織を介した副作用は評価が出来ない.そこで,本研究では,MEA上にhiPSCMおよびラット交感神経節細胞の共培養系を構築した.微小トンネルを介した2つの培養区画をもつ培養チャンバをMEA上に組み合わせ,hiPSCMおよびラット交感神経節細胞を培養した.免疫組織化学染色により交感神経節細胞の軸索が微小トンネルを介してhiPSCMまで到達していることを確認した.微小トンネルに設置した電極から電気刺激を印加して神経細胞の活動を励起した結果,hiPSCMの拍動頻度が上昇した.さらに刺激の印加回数を10, 100, 1000回(10 Hz)として比較したところ,刺激回数の増加に従って拍動頻度の上昇が大きくなった.以上の結果は,hiPSCMが交感神経節細胞による拍動調節を受けたこと,および本システムにより交感神経による拍動調節を制御できることを示唆する.