2017 年 55Annual 巻 5PM-Abstract 号 p. 450
細胞組織工学は細胞・生理活性物質・足場素材の3つの要素から成り立つ。この足場素材は細胞が生着・機能するだけの場ではなく、細胞に対して様々な影響を与えていることが示唆されている。近年、弾性を調整したアクリルアミドゲルを足場素材とし、組織の硬さに近いゲル上で培養された間葉系幹細胞は、その組織を構成する細胞に分化しやすいことが報告され、足場の力学特性が幹細胞の分化に及ぼす影響について注目されている。しかし、足場の弾性のみを独立して調整することは難しく、多くの報告では組成濃度の変化が混在している。そこで本研究では非線形力学特性を有する豚羊膜を足場とし、応力を印加して弾性を調整する装置を開発し、足場の力学特性が培養したラット胎仔線維芽細胞の挙動に与える影響について検討した。豚羊膜の弾性を30kPa(自然長状態)、500kPa、1000kPa、2000kPaに設定し培養を行った結果、線維芽細胞の生着率・単位面積・アスペクト比では低い弾性から高い弾性にかけて減少する傾向、増殖率では増加傾向が見られた。