2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S13
研究者の自立において、その研究成果(アイデア)を特許として保護し、企業との交渉・契約において活用し、収入を得ることは、自らの研究の自由を確保する上で大切なことである。なぜなら自由に使える、使途の縛られない資金こそが、自由な研究の出発点だからである。しかしながら、契約交渉などの行為は研究者が最も苦手とするところであり、多くの時間が割かれる。そのため、平成10年の「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(TLO法)が制定されて、仲介者としての技術移転機関(TLO)が誕生した。TLOは研究者の苦手とするところを補完し、研究者はさらに新しいアイデアを生み出す…そういった理想が20年前に謳われ、現在、一部で成功事例は見られるが、未だ多くが実現できていない。なぜか。原因はさまざまだが、その一つとして考えられるのが、特許を出願することに主眼を置き、特許を使う(活用する)ことに対して十分な知識がなかったことだと考える。そこで特許出願と付随する契約交渉などの注意点を紹介し、皆様と特許の活用について考えてみたい。