生体医工学
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特許を活用できない研究者は滅びる
石原 謙
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S14

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抄録

 研究者は自ら「研究成果が世の中に貢献できるのだからそれだけで良い。」「好きなことをしているのだから貧乏でも仕方がない」とか「研究の喜びは何にも替えがたいものだから貧乏でも良い」などと自らの経済音痴の言い訳をしがちである。 こういう研究者の態度は日本の経済と産業の発展を損なっている。医学部であれ工学部であれ、研究者がお金に無頓着であることは大きな問題を生じているのだ。伊藤忠から、センチュリーメディカルそしてジョンソンエンドジョンソンを渡り歩いて素晴らしい業績を残し、医療機器開発に一家言をもつ名経営者の松本晃氏は言う。「米の研究者はお金を儲けて自らの喜びに変えることを是として一生懸命売れる研究をするが、日本の研究者はお金に無頓着なので結果的に商品にできるシビアな研究をしていない。企業からみると信頼できない。」至言であり、耳が痛い。 自らの経済的権利の放棄は、美談ではなく、期待しているご家族を切ない思いにさせる。さらには同僚・後輩への犯罪でもある。「優秀なあの先輩でも、この待遇で貧乏なんだから僕など仕方がない。」と思わせるからだ。 数学的アルゴリズムさえ特許になり得る時代である。知財を経済的にも活用できない研究者は、その組織やコミュニティまで滅ぼしかねないことを強く自覚しよう。今、大学こそが、知財活用のできる研究者を求めている。お金が嫌いなら、稼いだあとに寄付をすれば良いではないか。

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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