生体医工学
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海綿骨骨梁のアパタイト量調整が力学特性に与える影響
藤崎 和弘齋藤 直也森脇 健司笹川 和彦
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S21

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抄録

骨組織はアパタイトとコラーゲンからなる複合構造であり,組織の剛性はアパタイト含有量とアパタイト結晶の形態に強く依存する.骨組織からアパタイトを除去(脱灰)すると,マクロな弾性率は低下するが,コラーゲンのみの構造となることから柔軟で壊れにくい組織となる.これまで我々は,切り欠きを付与した牛大腿皮質骨試験片において,応力集中部の脱灰処理が衝撃破壊強度の改善に有効であることを示してきた.一方,骨組織へのアパタイト供給の観点から,電圧印加を利用した骨組織へのミネラル誘引技術を提案しており,アパタイト合成液中での通電により,皮質骨表面にリン酸カルシウムの結晶体を生成することに成功している.生体骨組織内のアパタイト量を自由に調整できれば,骨格系に作用する力学環境に合わせて組織の剛性と柔軟性を制御する積極的な骨折予防技術を提案できる.本研究では,骨梁構造からなる海綿骨に注目し,脱灰と結晶生成が組織の力学特性に与える影響を調査した.実験には牛大腿骨から成形した海綿骨試験片を用い,骨髄除去後に表層部のみの脱灰処理を行った.この脱灰処理により海綿骨試験片の弾性率は低下した.また,試験片をアパタイト合成液中で通電することで,脱灰の有無に関わらず内部の骨梁に結晶の生成が確認された.結晶生成量は通電時間に伴って増加していくが,表層部での形成が主であり,マクロな力学特性への寄与は小さかった.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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