2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S22
足指の骨折傷害は硬い物体との衝突や移動物体による押しつぶしなどの衝撃荷重により発生する.足指骨折を防止する対策を講じるために,外力による足指の傷害耐性を把握する必要があるが,足指のような小直径長骨の骨折に関する実験データは少ないのが現状である.そこで,本研究は落錘式衝撃試験機を用いてブタ足部の圧縮試験を行い,衝撃荷重に対する足指の力学的応答および骨折特性を明らかにするとともに,骨折リスクを評価する手法を新たに提案することを目的とした.ブタ足部は,骨部の構造および幾何形状がヒトに似ていることから試験片として選定した.試験は,衝突速度1.7 m/s~2.6 m/sの条件の下で37個のサンプルに対して実施した.骨折時の荷重等を正確に求めるために,中手骨にAEセンサを固定し,試験中に計測した信号を解析することにより,骨折の発生タイミングを特定した.試験機の加速度計,変位計および荷重計により計測した応答から骨折時の荷重,力積およびエネルギーを算出し,これらを統計的に分析することにより骨折の発生可能性を表すリスク曲線を構築した.このリスク曲線より,発生確率が50%となる荷重,力積およびエネルギーを骨折の発生閾値として提案することができると考えられる.また,過去に報告された準静的試験や動的試験の結果との比較を行い,衝突速度約3.0 m/sまでの範囲内においてほぼ同程度の荷重値で骨折が発生することがわかった.