生体医工学
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腱-骨付着部の材料特性のラマン分光計測
藏田 耕作岩田 季久田中 康嗣金澤 知之進後藤 昌史高松 洋
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S23

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抄録

腱板の腱-骨付着部では,コラーゲン線維が豊富な腱,線維軟骨,石灰化線維軟骨,骨の4つの組織が4層の階層構造をなして接合している.しかし,加齢や過負荷によって付着部が一度断裂すると,再建手術を行っても腱-骨移行部の機械的特性の低下によって再断裂を生じやすいことが指摘されている.再建手術後の強度低下には,腱-骨付着部の組織構造の違いが関与していることが予想されるが,詳細が分かっていない.そこで本研究では,ラット健常肩および再建肩の腱-骨付着部をレーザーラマン顕微鏡によって計測し,骨ミネラル分布やコラーゲン構造の変化を明らかにすることを目的とした.ラット棘上筋腱を上腕骨から切離した後に腱板再建手術を行った実験群と健常な対照群に対して,ダイヤモンドカッターを用いて上腕骨軸と平行方向に薄切した試料を作製した.骨領域から腱領域に向かってレーザーラマン顕微鏡を用いてラマンスペクトルを取得して比較したところ,再建手術後は骨部分のリモデリングが亢進するとともに骨ミネラル成分の沈着が増加することが明らかになった.また,骨,腱-骨移行部,腱のいずれの領域においてもコラーゲン架橋率の増加が認められた.これらの構造変化が腱板再建手術後の再断裂の発生に関与していると思われた.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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