人工呼吸器の使用状況電子管理システムの形式的検証

抄録

病院では，患者に適切な治療を行い，医療業務を効率よく遂行するために様々な医療ソフトウェアが利用されている．このソフトウェアは，病院ごとの業務内容に合わせて支援を行うために，医療従事者により病院内で開発され利用されることがある．医療現場で利用されるソフトウェアの不具合は，人の命や健康に影響を与える恐れがあることから，一般的なソフトウェアと比べ高い信頼性を求められている．しかしながら，日中は医療業務に携わっている医療従事者が，ソフトウェア開発に時間を割くことは困難であるため，ソフトウェアの不具合を自動的に検出するための手法が求められている．形式的検証手法であるモデル検査を用いて，医療従事者が開発したソフトウェアの振る舞いを自動的に検証する手法を提案する．提案手法では，VBA で記述されたシステムの実装を対象として，モデル検査ツール NuSMVを用いて検証を行う．検証例として，医療従事者である臨床工学技士が開発したデータベースシステムである人工呼吸器伝票管理システムを検証している．その結果、このシステムにはデータが消えてしまうバグが含まれていることを検出し，その不具合が発生する操作手順を示すことができた．また，検証結果をもとにシステムを修正したところ，不具合は解消され仕様を満たした．