生体医工学
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高齢者の認知症対策に向けた歩行支援システムの開発と足部ケアの重要性
山下 和彦
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 133

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抄録

65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症,それと同程度の人数の軽度認知障害(MCI)が存在すると報告される.そして,糖尿病や高血圧などの慢性疾患を複数持つことはアルツハイマー病や脳血管性認知症のリスクを高めると報告されている.2042年には高齢者人口がピークの3935万人となり,75歳以上の後期高齢化率の高まりから,認知症および軽度認知障害の特性を理解し,早期から日常生活機能を高めるアプローチが求められる.本研究では,ICTによる活動量計を用いた歩数と活動範囲を6年間調査してきた.対象者の中には30名の認知症者がおり(調査期間中に発症した),日常の歩数,買い物などのアクティビティが観察され,日常生活機能が評価できている. 一方で,認知症を含め,多くの高齢者の足部や足爪に変形などの問題が発生しており,転倒リスクの上昇と外出阻害要因となっている.本研究では,MCIを含む認知症の対象者に足部ケアを5か月間実施し,身体機能と行動の変化を調査した.MMSEが23点以下であっても足部ケアにより,下肢筋力,足指の可動性などの下肢機能が有意に改善した.さらに,MCIの対象者は活動性が向上し,地域活動に誘導することが可能となった.安心して歩ける身体づくりと日々の歩行状態を見える化し,習慣化するICTシステムは認知症者やハイリスク者にとって,本人,支援者双方に有効であることが示唆された.

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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