生体医工学
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在宅人工臓器治療の概要と医工連携の重要性
古薗 勉
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 136

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抄録

近年、心不全や腎不全などの重症臓器不全患者を対象とした補助人工心臓(Ventricular assist device, VAD)や在宅血液透析(Home hemodialysis, HHD)などの人工臓器を用いた在宅人工臓器治療はめざましい進歩を遂げている。それぞれの人工臓器の機能の向上や小型化によって、これまで入院施設や集団的治療が行われていた状況から一変して患者宅で実施できるようになった。それにより、患者の生活の質(Quality of life, QOL)や日常生活動作(activities of daily living, ADL)が一段と向上し、健常者と変わらない社会貢献ができる時代となっている。しなしながら、これらの在宅人工臓器治療は、海外の先進諸国では患者自身が介助者なしで治療を行えるにもかかわらず、我が国の治療ガイドラインやマニュアルなどではそれが許可されていない。この事実は、我が国の在宅人工臓器治療の拡大を妨げる主要な一因となっている。これには、我が国がゼロリスクを求める社会であることが背景にある。これを改善するには、安全性を担保しながら、遠隔医療やモニタリングに係る新技術を在宅人工臓器治療に導入することが重要と考えられる。日本生体医工学会と日本人工臓器学会などの関連学会との積極的な医工連携の実現が、現状を打開するゲームチェンジャーとなることを期待している。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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