生体医工学
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在宅補助人工心臓治療の現状と今後
西村 隆
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 138

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抄録

2011年より開始された植込型補助人工心臓(VAD)治療は、すでに1500例以上に提供されているが、その成績も極めて良好である。その多くが在宅治療まで到達できている一方で、初回再入院までの期間が1年未満の症例が60%以上と高頻度である。再入院理由は感染症、神経機能障害、不整脈、装置の不具合等が報告されている。いずれの合併症も致死的となる可能性があるが、その発生率に比して良好な生存率が得られているのは早期対応ができているためと考えられている。 この成績の維持に貢献しているものとしてガイドラインによる治療の標準化、治療参加施設および医療従事者に対する認定制度を教育制度、全例登録を義務づけたレジストリによる治療成績管理が挙げられる。 現在進められているVAD治療の適応拡大に伴い、更なる治療の長期化、ハイリスク化が進むと考えられているが、これを克服するために、いくつかの医工学的アプローチが報告されつつある。その一つとして、感染の門戸となる駆動ケーブルの皮膚貫通部を無くする「経皮的エネルギー伝送」である。電磁誘導で体外から直接ポンプ駆動電力を供給するもので、すでに海外では臨床使用が開始された。もう一つは、「遠隔モニタリング」で、新しい通信環境、AI等を駆使して、ポンプおよび患者の異常をいち早く検知して対応すること目指している。このように、今後も在宅VAD治療に医工学の果たす役割は大きいと期待される。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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