生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
ゼロリスク社会における在宅血液透析の安全性保障に必要な生体医工学技術
政金 生人古薗 勉若井 陽希
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 139

詳細
抄録

 在宅血液透析(Home Hemodialysis: HHD)は自らのライフスタイルに合わせて、十分な透析量を確保出来る理想的な透析治療であり、また単位時間内の除去効率・除水量を低下させるため、施設血液透析より安全な治療といえるが、維持透析患者のわずか0.2%がその恩恵を享受しているのみである。

 我が国ではHHDに介助者の存在を必須としており、独居者や同伴者が高齢な場合などHHDの道は事実上閉ざされ、その普及を妨げる要因になる。しかしながら患者の生体情報を収集し、AIによる自動診断から、患者へのアラートや緊急出動態勢発動を行うことができれば、介助者の負担を限りなく低減でき、その先の将来を見通す基礎になる。

 HHD治療中に起きるトラブルは、患者の居眠りや思い違いなどのミス、抜針や血圧低下など治療に由来するトラブル、健康人にも起こる心臓病や脳卒中などの急変である。これらを察知する指標には、患者の意識状態、血圧や脈拍、体動パターン、治療機器の状況などがあるが、新しい生体指標も提案されてきている。

 諸外国では患者と医療者の契約のもと自己責任でHHDが行われており、治療中のトラブルで不幸な結果を招いても医事訴訟に発展することはほとんどない。しかしながらゼロリスク社会の我が国では、あらゆるトラブルに対応できる遠隔モニタリングシステムの構築が、患者と介助者の負担を軽減しHHD普及の必須要件と考えられる。

著者関連情報
© 2021 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top