生体医工学
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心臓電気生理in silicoの医療機器開発におけるニーズと課題
芦原 貴司
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 149

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抄録

 コンピュータシミュレーション(in silico)は,長らく学術領域で理論研究の方法として用いられてきたが,近年,医療機器開発にも活用されるようになった.ここでは3つの活用事例を示し,将来に向けたin silicoのニーズと課題について述べたい.(事例1:医療機器の開発段階において)バイドメインモデルで構築された心室モデルを用いて電気的除細動の仮想実験を行い,電気ショック波形,電気ショックリード等,電気的除細動器の開発に見通しを付ける.(事例2:医療機器そのものとして)心筋細胞の数学モデルをユニットとする心臓安全性薬理試験用シミュレータ.未知の薬物がどのような活動電位変化や臨床心電図変化を示し,催不整脈性の有無を判定できる.(事例3:医療機器の一部として)非発作性(慢性)心房細動患者の心内で計測した生体信号を記録する医療機器と,その生体信号情報を補完するシミュレータによるハイブリッドシステムで,治療標的を推定できる. かつてin silicoは基礎・臨床医学に基づく仮説を検証するための一手段に過ぎなかったが,医療機器そのものが持つ技術的・経済的・倫理的限界を解決するために,医療機器の開発段階における精度検証や予備試験として,または医療機器そのものあるいはその一部として用いられるようになった.もっと最近ではAIのブラックボックス部分の説明ツールとしてのニーズも高まっており,in silicoのさらなる拡充が見込まれる.

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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