生体医工学
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疫禍下で取り組んだ分散型医療機器開発と日本型エコシステム構築
木阪 智彦石北 直之
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 153

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抄録

これまで平時において、医療機器領域でイノベーションを起こすにあたり大都市への集中が有利と考えられ、中央集中型の開発ネットワークが形成されてきた。大都市に集まる情報、高度情報化と製造ラインの集約、許認可プロセスの利便性、産学官連携に加え財界とのアクセスが成功のチャンスを高めてきた。未曾有の疫禍となったCOVID-19が広がり、物流が滞る状況下で平時の医療機器開発プロセスは麻痺した。我々は、地方を拠点とする中核病院、国立大学、企業がリソースを持ち寄る形の分散型医療機器開発プラットフォームを提案し、フルーガルな開発フェーズを実践するチームを編成した(研究代表:石北直之)。発明者が所属する国立病院に事務局が設置され、国立病院機構が全面的に支援するなか活動を継続した。この取り組みをCOVID-19の蔓延する社会情勢においてレジリエンスを発揮し、機器開発を推進する解として提示する。緊急事態宣言が発出されなかった地域の研究機関を中心に、試験機器開発・非臨床試験・実験動物を用いた生体パラメータ評価・品質管理体制の導入支援において開発チームの多様性が強みとなった。試行錯誤し見出した日本型のエコシステムが、これから「和」の国に集うイノベーターが国際的な舞台へと飛躍するためのプラットフォームとして根付くことを希求し、今後の活動が地方創生につながることで、持続可能な将来を実現する可能性について展望したい。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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