2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 279
動脈の脈波伝播速度(以下,PWV)は血圧や動脈硬化などの重要な情報を含んでおり,PWVを利用した循環指標の評価は非侵襲的な手法として期待されている.一般に,PWVの計測は心電図と末梢の脈波を利用することが多く,離れた異なる部位に複数のセンサを装着する必要がある.末梢の比較的近い2点間の光電脈波で計測できることが理想であるが,計測点の距離が近い場合は精度が低くなること,血管から組織までの伝播特性を無視できないことなどから,比較的近い2点間において距離と脈波の時間差の比からPWVを算出することは困難である.そこで本研究では,手の昇降を利用して末梢の脈波からPWVを推定することを目的とした.末梢で計測される脈波は動脈からセンサが装着されている組織までの伝播特性の影響を受けており,動脈における正確な脈の到達時間を得ることは困難である.一方,スティフネスパラメータβを考慮すると,末梢におけるPWVの二乗は血圧変化と比例することが知られている.本研究ではこのことを利用して,末梢における脈の伝播時間差を補正してPWVを推定した.検証実験の結果,提案方法によるPWVの推定値と心電図と末梢の脈波から算出したPWVとの間に正の強い相関があり,手の比較的近い2点の脈波からPWVを推定できる可能性が示唆された.