生体医工学
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中心溝近傍病変による非典型的な体性感覚機能局在を誘発磁界により予測できた一例
石田 誠柿坂 庸介菅野 彰剛大沢 伸一郎浮城 一司神 一敬冨永 悌二中里 信和
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2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 670-671

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抄録

【背景】てんかんの原因病変である限局性皮質異形成(focal cortical dysplasia; FCD)では、皮質機能局在が健常者と異なる場合がある。今回我々は、中心溝近傍のFCDを有した頭頂葉てんかん例において、体性感覚野の異常局在を体性感覚誘発磁界(somatosensory evoked magnetic field; SEF)により、術前に推測しえた一例を経験したので報告する。

【症例】症例は左利きの14歳女児で、1歳時に右半身の運動症状を繰り返した。薬剤抵抗性に経過し、右上肢を強直させる発作を繰り返したため、外科治療を目的に精査入院となった。入院時、右上下肢にMMT 4/5の運動麻痺を有した。感覚低下は中度知的障害のため評価困難であった。脳波で左中心部の発作間欠時棘波を、MRIでは左頭頂葉にFCDを疑う所見を認めた。後脛骨神経刺激SEFは左右とも正常であったが、正中神経刺激SEFでは左刺激は正常、右刺激でN20mを認めず、P25mと考えられる成分が確認された。その等価電流双極子の位置は中心溝上に推定されたが、下肢の領域に近接していた。硬膜下電極留置による正中神経刺激体性感覚誘発電位によって、SEFの異常と一致する所見が確認された。この領域を温存し病変の切除術を行ったが、皮質下線維の障害と考えられる上下肢の麻痺の悪化を認めている。

【考察】FCDにおける非典型的な機能局在を術前に非侵襲的に予測しえたことは、てんかんのみならず脳腫瘍などの術前診断に、SEFは有用であることを示す。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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