生体医工学
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カゼインミセルの形成を利用した静脈エアトラップチャンバ内の血液凝固の模擬方法
巻田 浩輝奥 知子山内 忍本橋 由香佐藤 敏夫
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2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 699-700

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抄録

我々は、血液凝固が発生しにくい理想的なチャンバ形状を提案することを目指している。そのためには、血液透析の臨床現場で発生している血液凝固過程を模擬する必要がある。そこで、カゼインナトリウム水溶液にクエン酸を添加することで、静脈側エアトラップチャンバ内で血液凝固塊を模擬したカゼインミセルを形成し、それが濾過フィルタで補足されることによって血液回路内圧が緩徐に上昇する方法について検討した。

実験では、市販の垂直流入方式(縦流入)でコーン型濾過フィルタを持つ静脈側エアトラップチャンバを使用した。カゼインナトリウム水溶液を設定流量200ml/minで血液回路内に循環した。チャンバの液面調整ラインをシリンジポンプに接続し、そこからクエン酸水溶液を持続注入することで、血液凝固塊を模擬したカゼインミセル会合体を形成した。形成されたカゼインミセル会合体がコーン型濾過フィルタに捕捉されることで生じる回路内圧の上昇を連続測定した。

カゼインナトリウム水溶液にクエン酸水溶液を3分間で5ml添加したところ、添加開始から50秒を超えた頃から回路内圧が上昇し始め、約150秒を過ぎると急激に回路内圧が上昇して200mmHgを超えた。測定終了後、チャンバを切断し、コーン型濾過フィルタ周辺の様子を観察したところ、コーン型濾過フィルタにカゼインミセル会合体が大量に捕捉され、コーンが目詰まりしている様子が確認できた。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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