2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 208_2
飲酒は時に心身に悪影響を及ぼす.適量の飲酒であれば円滑なコミュニケーションの補助などポジティブな効果をもたらすが,摂取量が過多になると判断力の低下や,急性アルコール中毒など様々な有害事象を引き起こしてしまう.個人の心身の問題に留まらず,社会的な観点からも悪影響が出ない範囲の酩酊状態までに抑えることが望まれる.
酩酊度合いに関する計測手段はいくつかあり,呼気中アルコール濃度検査もその一つである.一方で経時的に変化する酩酊度合いを検出するためには,連続的なモニタリングが必要となる.そのため,連続的な計測が可能な心拍変動による酩酊度合いの評価が着目されるようになっている.心拍変動指標は自律神経活動と相関することが知られており,酩酊状態も自律神経の変化を生じると考えられていることから,心拍変動は酩酊状態の変化を検知する上で適した指標になりうると考えられる.しかし,心拍変動と酩酊段階について詳細に評価している研究は乏しい.
本研究では,心拍変動指標が酩酊段階に応じてどのように変化しているのか明らかにする.実験では被験者に実際に飲酒してもらった上で,心拍変動に加え,逆唱・片足立位などの各種神経学的検査および呼気中アルコール濃度検査についても計測を行った.
本報告では,その基礎的な検証として呼気中アルコール濃度から推定した酩酊段階,心拍変動指標,各神経学的検査の相関など基礎的検証内容について報告する.