抄録
マーケティングによる消費者へのコミュニケーションは、オープン・コンティンジェンシー構造に直面することになる。オープン・コンティンジェンシー構造とは、偶有性 (=他でもあり得る可能性) を閉ざそうとするときに、さらなる偶有性に開かれていくという関係の構造である。
本章では、理論的な検討を通じて、このオープン・コンティンジェンシー構造の2つの基本的な系列、すなわち時間の流れのなかで偶有性に開かれていく関係の系列と、論理階型を通じて偶有性に開かれていく関係の系列のもとに置かれたマーケティング・コミュニケーションが、一定の理解や評価をその受け手の間で確立する機制を提示する。この局面で解釈の再帰的循環が果たす役割と限界が指摘される。