Dynamics & Design Conference
Online ISSN : 2424-2993
セッションID: 314
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314 差圧伝送器による導圧管の詰まり診断に関する研究 : 第3報:過渡状態を考慮した診断
栄野 隼一涌井 徹也橋詰 匠宮地 宣夫齋藤 洋二黒森 健一結城 義敬
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抄録
差圧伝送器とオリフィスを用いた流量計測は,適用範囲が広く安価なため,プロセス分野で広く用いられている.この差圧式流量計の不具合の大部分は,オリフィスから差圧伝送器に圧力を伝える導圧管の詰まりであるため,導圧管の恒常的な詰まり監視・診断が求められている.そこで,本研究は導圧管のオンライン診断の開発を目的としている.これまでに,水流ラインを対象とした,ニードル弁による導圧管の詰まり模擬装置(Fig,A1)を作成した.そして,導圧管の詰まりと圧力信号に含まれる揺動成分の関連性に着目し,複数の運転動作点(流量・圧力)に対応した導圧管の詰まり診断手法を考案した.この手法は,運転動作点の変化に影響を受けない導圧管の詰まり状態の指標として,詰まりが進行するにしたがって0に近づく診断パラメータを定義しており,常に同一の閾値を用いて詰まり診断ができる.ただし,定常状態のみを対象としているため,過渡状態は考慮されていない.各種プロセスでは,運転動作点の変化に伴う過渡状態は多く存在するため,過渡状態での誤検出や検出漏れは実用に際して大きな障害となる.そこで,本報では過渡状態を考慮した導圧管の詰まり診断手法の構築を目的とする.オリフィス下流に設置した調節弁を正弦波状とランプ状に動作させて過渡状態を作り出した結果,詰まりがない場合には,調節弁の動作が早くなっても診断パラメータは変化せず,誤検出は発生しないことが明らかとなった.しかし,詰まりがある場合には,調節弁の動作が早くなるにつれて,診断パラメータの値が増加し,詰まりを検出できないことが明らかになった.この原因を調査するために,診断パラメータの構成要素である揺動の大きさについて考察し,ライン圧力の変化速度が診断パラメータに大きな影響を与えていることがわかった.さらに,圧力変化指数(IPV:Index of Pressure Variation)を導入することによって圧力測定値の移動平均値の変動を定量的に評価することができ,ライン圧力の変動形態によらず,診断パラメータに与える影響が一意に定まることを示した.Fig.A2は,高圧側の導圧管が詰まった状態で過渡状態としたときの,圧力変化指数と診断パラメータの関係を表している.高圧側が詰まっているため,本来高圧側の診断パラメータは低い値になるが,正弦波状変化,ランプ状変化ともに,圧力変化指数が大きくなるにつれて高圧側の診断パラメータの値が大きくなっていることがわかる.圧力変化指数が大きい場合には,検出漏れが発生する可能性があるため,現状ではオペレータにその旨を通知して詰まり診断を停止する必要がある,今後は,このような場合に対応した詰まりの検出手法を考案していく.
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© 2006 一般社団法人 日本機械学会
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